第19弾 報告書

復興地からのレポート      第19弾 image3

活動日 平成24年06月30日~07月01日

今回の訪問先

  • 宮城県亘理町/S様宅
  • 宮城県亘理町/亘理町応援団 本部

 

 

大変遅くなりましたが第19弾の活動報告をさせて戴きます。
今回は当初6月23・24日に運行する予定でしたが、台風の影響を考慮し、急遽月末に出発し1日限定の活動をして参りました。今回は大型車1台。私とT社長、そして今回初参加となった三重大学医学部のN先生の3名という本当にこじんまりとした陣容でした。N先生とは「つながろう三重」というボランティア団体の連絡会でお会いし、その後三重大生さんの主催した物資回収のイベントなどで数回の面識があった程度でしたが、出発前に参加の連絡を戴きました。元々小学校の養護教諭、看護士を経て現在は医学部看護学科で地域看護学の助教として教壇に立つという今までのスタッフとは異なる経歴の持ち主でした。

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実は、今回は物資の配布も勿論行いましたが、新たな応援方法の模索をする目的もあったので、私としては願っても無い助っ人でした。
新たな応援…従来は全国の皆様からお預かりした物資を必要とされる地域へお届けすることがメインであり、少しずつ現地で顔馴染みが出来ると色々な話を聞かせて戴いたり、こちらのイベントなどで物品販売のお手伝いをしたりもして今日に至っております。現地の状況を、現地の生の声を皆様にご報告することも続けて来た所存です。然し、自分自身がどうも物足りなさというか、本来ならばもっと大切な応援活動ができるんじゃないか、と毎回帰って来ては自問自答のくり返しでした。地元の人の話を聞く・・これが不足していたんです。  
これまでの活動報告をご覧戴ければお解りかと思いますが、なにせ本業の合間を縫ってのボランティアですから現地で滞在出来る時間は限られてしまいます。また、折角行くのならあそこにも寄りたい、こちらにも顔を出したい、あの人たちはどうしているかな、と思い巡らすと1日に数ヶ所という強行軍になってしまいます。沢山の物資の積卸しを何度もする訳ですからスタッフも帰り道はかなり疲労も溜まってしまいます。 
そんなことも踏まえ、今回は1ヶ所でなるべくゆっくりと時間を取り、現地の方と膝を交えてゆっくり話をすることにしました。もう一つの目的は「夏まつり」の予行演習です。8月に夏まつりを開催する予定ですが、どういったものを子供さんたちが喜ぶだろうか、何を期待してくれるんだろうか、という言わば「下調べ」です。そんな思いから、今回ドライバーが自分一人ということもあって距離的にも近い亘理へ伺いました。 

朝8時、順調に走って宮城県の白石ICを降り、今回お世話になるSさんに連絡したところ、「朝御飯用意しっから!すぐに来てよ!」と有難いお言葉。何度もお邪魔して親戚のような錯覚すら感じるSさん宅です。お言葉に甘えて遠慮無しに直行です。つい最近完成したばかりの母屋へ入れて戴き、朝から豪勢な食事を戴きました。丁度、奥の部屋から末っ子のO君が寝起きの顔で登場。毎週末はおじいちゃん・おばあちゃんと母屋で寝ているそうです。今までは祖父母は仮設住宅でしたから、これだけでも震災前と同じになったね、と笑顔が溢れます。お父さん(以後 おじいちゃん)の案内で畑へ。前回、愛媛から提供された「種芋」だった里芋が立派に育ち、塩害に負けず根を張っています。ビニールハウスの中はどの棟(5棟ありました)も色々な野菜が元気に育っています。 

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流石に何度も訪れているとご近所の皆さんともすっかり仲良くなり、トラックが入って来るのが見えたから、と朝から人が集まって来てくれます。子供さんたちも毎回似顔絵を描いてくれたりして歓迎してくれるんですが、今回は「こにゅうどうくん」の顔をモチーフにしたアクセサリーを作ってくれていました。(#^.^#)
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早速庭先がまさに「バーゲン会場」と化し、T社長も荷卸しに懸命です。皆さん馴れているから荷卸し、陳列の早いこと!並べる傍から物資が引取られて行きます。今日積んできたのはすべてこの地区のためですから、ゆっくり選んで下さいね~!

いつになくゆっくりと配布会を行いながら、昼休みから次の準備。そう、子供さんたちが待ちかねていた「ミニ夏まつり」の開会です。今回は金魚すくい、ヨーヨー(水風船)釣り、貝殻細工など比較的準備が簡単なものだけ用意しました。(スタッフの数が少ないので・・・)それでもすごく喜んでくれました。
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何回破れても、すぐに次の「ポイ」が渡されます。普通の縁日では考えられない程の「戦利品」を手にした子どもたちは大満足。わずか5~6名の子どもにビニール製金魚200匹、スーパーボール300個、水風船150個がプレゼントとなりました。T社長も水鉄砲を持ち出し、男の子2人と水の掛け合い。これも次回の夏まつりの目玉イベントなんですが、想像通り大好評。なかなか親の目の前でずぶ濡れになることは出来ないもんね!今日ばかりは事前に了解を戴いてるので、頭のてっぺんから足の先までたっぷりと水を掛けられてました。

子どもたちがはしゃいでいる頃、今回初の試み「健康相談」の開始です。金魚すくいに夢中になっている(?)N先生にお願いし、即席の相談コーナー(と言っても机と椅子を置いただけ)を設け、お母さんたちに声を掛けました。最初は遠慮したり恥ずかしがっていたものの、一人が座るとすぐに後ろに列が出来ます。血圧を測り、日常生活の様子をヒアリングするN先生の顔もいつしか「本職」に変わっているのには驚きました。それとなく傍で聞いているとやはり震災以降十分寝れなかったり血圧が上がったりとかなりのストレスが蓄積されているようです。それでも皆さん明るく、お互いの血圧を冷やかしたり生活相談をあれこれ聞いたりと和やかな雰囲気ですが、やはり生活習慣でも問題が多いようで、このような医療関係者による健康相談やカウンセラーによる悩み相談はかなりの反響がありそうで、今後のあすなろの活動の定番になりそうです。
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この後、T社長が面白半分に血圧測定したところ信じられない事実が判明!通常の人間では考えられられない高数値が出て、帰り道ではN先生からずっと説教、いや健康アドバイスを受けていました。因みに私は上が128、下が80と健康優良児そのものでしたよ。

庭先ではSさんファミリーが何やら慌ただしく動き回っています。どうやら我々のために「バーベキュー」をして戴くようです。その時間を利用して子どもたちと海岸までサイクリング。実は、貝殻細工をするのに肝心の貝殻を持ってくるのを忘れていたんです。昨年の夏にS部長と海岸へ行った際に大きな貝殻が落ちていることを知っていたので、そうとは言わずに「サイクリング行くよ~!」子ども全員が参加、N先生まで自転車(支援物資として持って来たもの)に跨ってスタンバイしています。さらに4歳のO君まで愛車の三輪車を引っ張って来て行く気満々。海岸まで約2km。今更来るなとは言える雰囲気ではありません。結局お姉ちゃんたちが先頭になり、遅れ気味のO君、最後尾にN先生と廻りに何も無い土地を奇妙な集団が走ります。それでもこんな何でもないようなことがこの子たちにとっては
楽しい事なんだと思うと何だかいたたまれなくなりました。

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亘理の海岸にて。子どもたちは勿論津波を経験しています。「海、怖くないの?」と聞くとやはり少しは忌まわしい思い出が甦るようでしたが、「おととしまでよく海水浴に来たの」と懐かしそうな目をして話してくれました。去年の夏は瓦礫も海岸線に山積みされていたので海へは来れなかったようですが、まだゴミや瓦礫が散乱する浜辺を元気に走り回っている姿を見て、来年こそはこの浜に海水浴客が戻ってくることを願わずにはいられませんでした。
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海岸からSさん宅の間はこんな風景が延々と広がっています。新しく出来た焼却施設が24時間フル稼働しているお蔭で瓦礫の量は明らかに減りました。それでもここから南にある山元町、南相馬と同様かこれ以上にひどい風景が未だに残っています。かつてのように人が、企業が戻れるようになる日が待ち遠しい思いです。
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余りにも我々の帰りが遅かったので、おじいちゃんが迎えに来てくれました。都会の街中ならすぐに警察に怒られそうですが、これも子どもたちにとっては最高の思い出でしょうね。おじいちゃんの笑顔、子どもたちの笑顔が印象的でした。

Sさん宅ではすでにバーベキューが始まっています。何かの台に使えるから、ということでお届けした「電線ケーブル」のドラムが早くもテーブルとして活用されています。この後、この電線ドラムは「鉢植」となりました。モノはアイデア次第で色んな使い道がありますね。
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バーベキューの後は貝殻細工。100円ショップで仕入れた飾りを貝殻に貼り付けるだけの単純なものですが、やはり女の子は可愛く豪華に盛り付けます。帰り際に「お土産」としていくつか分けてくれました。また宝物が増えました!\(^o^)/
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この日は偶然にもO君4歳の誕生日。みんなでお祝いのケーキを戴きました。それにしてもおじいちゃんはいつも笑顔を見せてくれますが、この地区で真っ先に畑の瓦礫を撤去し、ビニールハウスを建て、野菜作りを始めて母屋まで立て直したバイタリティ溢れる人物です。お孫さんが可愛くて仕方がないけど怒ると怖いそうです。来年こそ念願の苺栽培が出来るといいですね!

結局、朝8時から夕方6時まで、仮眠までさせて戴いてすっかり寛いでしまいましたがいつものお別れの時間がやって来ました。この間、「亘理町応援団」さんという現地のNPO法人さんへ伺い、ブルーシートを十数枚お届けしたりもしました。このNPOの代表Iさんもイチゴ農家で、早くも水耕栽培でイチゴを作られていました。また、あちらこちらの仮設住宅やイベントには2匹のヤギを連れて行き、「アニマルセラピー」を実践されています。次回はこの「亘理町応援団」さんと合同で、この近くにある世帯数520という大きな仮設住宅へ訪問させて戴くことになりそうです。一日中ご一緒させて戴くと全く普通の家庭であり、「被災地」であることすら忘れてしまいそうですが、一歩外へ出ると見渡す限り何も無い土地が広がり、未だに続く余震に怯える毎日です。一年以上が過ぎてようやく近所の人も1軒、また1軒と戻り始めているそうですが、流された数百世帯の家族はいつになったら戻れるのかすら見通しの立たない毎日で、生活の不安、仕事の不安、健康面の不安に包まれています。マスコミでは最近殆どと言っていい程現地の情報を取り上げていません。どこどこで祭りが復活した、という明るい話題は時折放送しますが原発に関する話題以外は聞かなくなりました。現実にはその日その日の暮らしに不安を抱え、経済的にも苦しんでいる真の姿をもっと取り上げるべきではないでしょうか。少なくとも、まだまだ復興地への支援活動を行っているボランティア、NPOはたくさん存在します。そのどこもが震災の風化を恐れ、運営資金に苦しみながらもまだまだ継続の必要性を訴えています。
我々「あすなろ応援便」も活動内容は現地のニーズに合わせて変えては行きますが、従来通り現地の「生の声」を広く発信することを続けて参ります。何時の日か、必ず我々の活動も必要が無くなるでしょうし、その日が一日も早く来ることを願っていますがこの活動を通じて知り合った皆さんとはいつまでも「仲間」として今後も東北を応援して行きたいと願っています。少しずつではありますが、昨年のような悲壮感が漂う活動は無くなりました。楽しく笑い合える機会も増えては来ました。それでも、心から笑い合えるには今暫く時間を要します。せめて次回の夏まつりだけは思いっ切り子どもたちと遊び、その様子を見守ってくれる大人たちにほんの一瞬でも気を休めてもらえれば、と思っています。歯を食いしばって支援することは支援される側にも負担になる、と言われました。一緒に笑い、一緒に騒いでくれるほうが却って嬉しいよ、と言われました。その言葉を胸に、これからも現地の皆さんと一緒に元気になれるような活動を心掛けて参ります。

第19弾に際してご支援・ご協力を戴きました全国の皆様に末筆ながら心より御礼申し上げ、活動報告とさせて戴きます。有難うございました。

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